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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
家の前は清い小みぞが音を立てて流れている。
狭い村道の向こう側は一面の青田で向こうには徳川以前の小さい城跡の丘が見える。
古風な屋根門のすぐわきに大きな楝の木が茂った枝を広げて、日盛りの道に涼しい陰をこしらえていた。
通りがかりの行商人などがよく門前で荷をおろし、門流れで顔を洗うたぬれ手ぬぐいを口にくわえて涼んでいる事がある。
一日暑い盛りに門へ出たら、木陰で桶屋が釣瓶や桶のたがをはめていた。
きれいに掃いた道に青竹の削りくずや鉋くずが散らばって楝の花がこぼれている。
桶屋は黒い痘痕のある一癖ありそうな男である。
手ぬぐい地の肌着から黒い胸毛を現わしてたくましい腕に木槌をふるうている。
槌の音が向こうの丘に反響して静かな村里に響き渡る。
稲田には強烈な日光がまぶしいようにさして、田んぼは暑さに眠っているように見える。
そこへ羅宇屋が一人来て桶屋のそばへ荷をおろす。
古いそして小さすぎて胸の合わぬ小倉の洋服に、腰から下は股引脚絆で、素足に草鞋をはいている。
古い冬の中折れを眉深に着ているが、頭はきれいに剃った坊主らしい。
「きょうも松魚が捕れたのう」と羅宇屋が話しかける。
桶屋は「捕れたかい、このごろはなんぼ捕れても、みんな蒸気で上へ積み出すからこちらの口へははいらんわい」