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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
またたとえば絵はがきの絵や、見舞いの贈り物などからさえも、ほとんど他人には想像もつかないような「意味」を感得する事があった。
そういう状態にある彼は、今この差出人の不明な、何物とも知れぬ球根の小包を受け取って無頓着でいるわけにはゆかなかったのである。
彼は一度紙屑籠へほうり込んであった包み紙やひもや名あて札をもう一ぺん検査して見た。ひもにはりつけた赤い紙片の上にはってある切手の消印を読もうとして苦しんでいたが、消印はただ輪郭の円形がぼんやり見えるだけであった。「実に無責任だなあ」郵便局に対する不平を口の内でつぶやきながら、空虚な円の中から何かを見いだそうとして、ためつすがめつながめていた。
失望の後に来る虚心の状態に帰って考えてみると、差出人のおおよその見当は、もう小包を手にした瞬間からついていたのであった。郷里にいる二人の姉のいずれかよりほかに、こういう物を送って来そうな先は考えられなかった。去年の秋K市の姉から寒竹の子を送ってくれた事、A村の姉からいつか茶の実をよこした事などが思い出された。そう言えば前にも今度と同じような鬱金木綿の袋へ何かはいって来た事も思い出したが、あいにくそれがどちらの姉だったか思い出せなかった。