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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

行って出してやると急いで飛び出すかと思うとまたもとの所へ走り込んだり、そうしてちょうど犬の子のするように人の足のまわりをかけめぐるのである。十日余りもこのような事を繰り返した後に、試みに例の寝床のボール箱と便器とを持ち出して三毛の出入りする切り穴のそばに置いてなんべんとなくそこへ連れて行っては土の香をかがしてやった。翌朝気をつけてみたが蒲団や畳のよごれた所はどこにも見つからなかった。たぶん三毛に導かれて切り穴から出る事を覚えたのであろう。その後は明け方に穴からはい上がるたまの姿を見かける事もあった。

異常に発達したたまの食欲はいくぶんか減ってそれほどにがつがつしなくなって来た。気持ちの悪いほどふくれていた腹がそんなに目立たなくなって来るとやせた腰からあと足が妙に見すぼらしく見えるようになりはしたが、それでもどうやら当たりまえの猫らしい格好をして来るのであった。そしてやはりどこか飼い猫らしい鷹揚さとお坊っちゃんらしい品のある愛らしさが見えだして来た。

夏休みが過ぎて学校が始まると猫のからだはようやく少し暇になった。午前中は風通しのいい中敷きなどに三毛と玉が四つ足を思うさま踏み延ばして昼寝をしているのであった。