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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
開花当時の気温を調べてみても必ずしも一定していない。無論その間ぎわの数日の気温の高低はかなりの影響をもつには相違ないが、それにしてもこの現象を決定する因子はその瞬間の気象要素のみではなくて、遠くさかのぼれば長い冬の間から初春へかけて、一見活動の中止しているように見える植物の内部に行なわれていた変化の積算したものが発現するものと考えられる。
そこへ行くと人間などはだらしのないものである。仕事が忙しかったり、つい病気したりしていると、いつのまにか柳が芽を吹いたり、桜のつぼみのふくらむのを知らないでいて、急に気がついて驚く事がある。
うっかりしている間に学年試験が目の前に来ていたり、借金の返済期限がさし迫っていたりする。
眠っているような植物の細胞の内部に、ひそかにしかし確実に進行している春の準備を考えるとなんだか恐ろしいような気もする。
四
植物が生物である事はだれでも知っている。しかしそれが「いきもの」である事は通例だれでも忘れている。
ある日私は活動写真で、菊の生長の状況を見せられた事がある。まず映画に現われたのは一つの小さな植木鉢であった。