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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

どういう人たちであったかそれはもう覚えていない。私にはただなんとなくそれがおとぎ話にあるようなさびしい山中の妖精の舞踊を思い出させた。そしてその時なぜだか感傷的な気分を誘われた。

その時見舞った病人はそれからまもなくなくなったのである。

私は今でも盆踊りというとその夜を思い出すが、不思議な錯覚から、その時踊っていた妖精のような人影の中に、死んだその人の影がいっしょに踊っていたのだというような気がしてしかたがない。

そして思う。西洋くさい文明が田舎のすみずみまで広がって行っても、盆の月夜には、どこかの山影のような所で、昔からの大和民族の影が昔の踊りを踊っているのではあるまいかと。

盆踊りという言葉にはイディルリックなそしてセンシュアスな余韻がある。しかしそれはどうしても現代のものではない。その余韻の源にさかのぼって行くと徳川時代などを突き抜けて遠い遠い古事記などの時代に到着する。

盆踊りのまだ行なわれている所があればそこにはどこかに奈良朝以前の民族の血が若い人たちのからだに流れているような気がしてしかたがない。そうしてそれが今滅亡に瀕しているような悲しみを感ずる。