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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

そしていつまでもそこを離れないで見ているのであった。

そのうちに土方のようなものが二三人すぐ背後のほうへ来て材木の上に腰かけて何かしきりに話し合っていた。だれかそこに来るはずの人――それはたぶん親方か何かがまだ来ていないのを待ち遠しがってうわさをしているらしかった。そばに「絵をかいている男」などはまるで問題にならないらしいほど熱心に話し合っていた。

そのうちに荷馬車の音がしておおぜいの人夫がやって来て、材木をころがしては車に積み始めたので、私はしばらく画架を片よせて避けなければならなかった。そこで少し離れた土管に腰をかけて煙草を吸いながらかきかけの絵の穴を埋める事を考えていた。

人夫の中には絵をのぞきに来るものもあった。そしていろいろ人を笑わせるつもりらしい粗暴なあるいは卑猥な言語を並べたりした。「あの曲がった煙突をかくといいんだがなあ」などという者もあった。「文展へ行って見ろ、島村観山とか寺岡広業とか、ああいうのはみんな大家だぜ、こんなのとはちがわあ」「あれでもどっかへ持って行きゃあ、三十円や五十円にゃあなるんだよ」などいうのも聞こえた。

さっきの子供はいつまでもそこいらを離れずにぶらぶらしていた。