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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
しかしそういう場合に私に応接した多くのおばさんたちは、子供の私がわけもなく笑い出してもそんな事はてんで問題にもならないようであった。かえって向こうでもにこにこして「たいへん大きくなった」などという。そんな事を言われてみると、もう少しも笑わなくともいいようになる。そうして同時になんとも言えない情けない自卑の念に襲われるのが常であった。
こういう「笑い」の癖は中学時代になってもなかなか直らなかった。そしてそれがしばしば自分を苦しめ恥ずかしめた。おごそかな神祭の席にすわっている時、まじめな音楽の演奏を聞いている時、長上の訓諭を聴聞する時など、すべて改まってまじめな心持ちになってからだをちゃんと緊張しようとする時にきっとこれに襲われ悩まされたのである。床屋で顔に剃刀をあてられる時もこれと似た場合で、この場合には危険の感じが笑いを誘発した。
年を取るに従って多少自分の内部の心理現象を内察する事を覚えてからはこの特殊な笑いの分析的の解説を求めようとした事は幾度あったかわからない。しかしそれは自分などの力にはとても合わないむつかしい問題であった。結局自分の神経の働き方にどこか異常な欠陥があるのであろうという、はなはだ不愉快な心細い結論に達するのが常であった。