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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页

青空文庫

それを話しながらも、また話したあとでも、私の頭の奥のほうで、現代文明の生んだあらゆる施設の保存期限が経過した後に起こるべき種々な困難がぼんやり意識されていた。これは昔天が落ちて来はしないかと心配した杞の国の人の取り越し苦労とはちがって、あまりに明白すぎるほど明白な、有限な未来にきたるべき当然の事実である。たとえばやや大きな地震があった場合に都市の水道やガスがだめになるというような事は、初めから明らかにわかっているが、また不思議に皆がいつでも忘れている事実である。

それで食後にこの夕刊の記事を読んだ時に、なんとなしに変な気持ちがした。今のついさきに思った事とあまりによく適応したからである。

それにしても、その程度の地震で、そればかりで、あの種類の構造物が崩壊するのは少しおかしいと思ったが、新聞の記事をよく読んでみると、かなり以前から多少亀裂でもはいって弱点のあったのが地震のために一度に片付いてしまったのであるらしい。そのような亀裂の入ったのはどういうわけだか、たとえば地盤の狂いといったような不可抗の理由によるのか、それとも工事が元来あまり完全ではなかったためだか、そんな事は今のところだれにもわからない問題であるらしい。