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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:どんぐり、科学者と芸術家、旅日記から、竜舌蘭、花物語、芝刈り、球根、簔虫と蜘蛛、ねずみと猫、物理学と感覚、先生への通信、病院の夜明けの物音、病室の花、丸善と三越、自画像、春寒、春六題、田園雑感、写生紀行、笑い、案内者、断水の日。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 页
とでも言いたかった。
科学の通俗化という事の奨励されるのは誠に結構な事であるが、こういうふうに堕落してまで通俗化されなければならないだろうかと思ってみた。科学その物のおもしろみは「真」というものに付随しているから、これを知らせる場合に、非科学的な第二義的興味のために肝心の真を犠牲にしてはならないはずである。しかし実際の科学の通俗的解説には、ややもするとほんとうの科学的興味は閑却されて、不妥当な譬喩やアナロジーの見当違いな興味が高調されやすいのは惜しい事である。そうなっては科学のほうは借りもので、結果はただ誤った知識と印象を伝えるばかりである。私はほんとうに科学を通俗化するという事はよほどすぐれた第一流の科学者にして初めてできうる事としか思われないのに、事実はこれと反対な傾向のあるのを残念に思う。
このようにして普及された間に合わせの科学的知識をたよりにしている不安さは、不完全な水道をあてにしている市民の不安さに比べてどちらとも言われないと思った。そして不愉快な日の不愉快さをもう一つ付け加えられるような気がした。
水道がこんなぐあいだと、うちでも一つ井戸を掘らなければなるまいという提議が夕飯の膳で持ち出された。