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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:映画時代、子猫、解かれた象、相対性原理側面観、怪異考、比較言語学における統計的研究法の可能性について、化け物の進化、ルクレチウスと科学、蓄音機、亮の追憶、一つの思考実験、電車の混雑について、浮世絵の曲線、二十四年前、伊吹山の句について、池、路傍の草、備忘録、日本楽器の名称、Liber Studiorum、時事雑感。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 页
年の暮れに余分な銭のあったのをヴィクトロラの中でいちばん安いのにかえて針も三角の竹針を用いる事にした。同じレコードの中から今まで聞かれなかったいろいろの微細な音色のニュアンスなどが聞き分けられるのが不思議なくらいであった。ごまかしの八百倍の顕微鏡でのぞいたものをツァイスのでのぞいて見るような心持ちがした。精妙ないいものの中から、そのいいところを取り出すにはやはりそれに応ずるだけの精微の仕掛けが必要であると思った。すぐれた頭の能力をもった人間に牛馬のする仕事を課していたような、済まない事をしていたというような気がするのであった。
鉄針と竹針とによる音色の相違はおそらく針自身の固有振動にも関係するだろうしまた接触点の弾性にもよるだろうが、これらの点を徹底的に研究すれば今後の改良に関する有益なヒントを得られるだろうと思われる。
いずれにしてもまだ現在の蓄音機は不完全と言われてもしかたのない状態にある。三色写真が絵画の複製術として物足りないごとく、蓄音機は名曲のすぐれた演奏の再現器として物足りないものである。それだから蓄音機は潔癖な音楽家から軽視されあるいは嫌忌されるのもやむを得ない事かもしれない。