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しょうじょじごく

少女地獄

夢野 久作

「少女地獄」黒白書房、1936(昭和11)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,174 字 · 206 页

青空文庫

そうしてその悪魔の羽ばたきは私を、逃げようにも逃げられないこの世の地獄の中へ、どんなに無慈悲にタタキ落して行きましたことか……。こんなに黒焦になってでも清算しなければ清算し切れないほどの責め苦の中へ、私を追い込んで行きました事か……。

その羽ばたきの主は、真黒い毛だらけの熊みたような校長先生と、眼も口もない真白な頭を今一つ背中に取付けておられる川村書記さん……それから今一人、後から出てお出でになる虎間トラ子先生……ヨークシャ豚のように醜いデブちゃん……私たちの英語の先生……この三人があの廃屋に人知れず巣喰っていた悪魔なのでした。

あの廃屋の二階を、私が大切な瞑想の道場としている事を夢にも御存じない校長先生と、傴僂の老人の川村書記さんとは、いつも学期末の近付いた放課後になると、職員便所の横のカンナの葉蔭から、通行禁止の弓道場の板囲いの蔭伝いに仲よく連立って、コッソリと入って来られるのでした。そうして私の寝ている籐椅子の直ぐ真下の、八畳敷のゴミクタの中に坐って、いろいろな事を御相談なさるのでした。あんまり度々校内に居残って書記さんと密談なんかなさると、居残りや宿直の先生たちに妙な意味で見咎められるかも知れないし、学校の外でも世間の人目がうるさいと言ったようなデリケートな教育家の立場をよく御存じの校長先生に取っ