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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

街の空気はしいんと鳴りをひそめながらも何処かに無気味なものを孕んでいることが眼に見えるようであった。森川町へゆく舟形と日比谷の交叉点でわかれると伍一はざわざわとうごく人波を押しわけてその日の朝、暴徒に襲われたというA新聞社の方まで歩いていったが、町角や電柱の前にかたまっている群集の眼はやっとひと幕終ったあとの次の舞台を待ち望んでいるような好奇の感情にみちみちていた。襲撃された筈のA新聞社の前には自動車が二、三台置いてあるきりで格別変った様子もなかったがひっそりとしているだけに不穏なかんじがまだ何処かに翳をひそめている。何処へ行くというあてもないので伍一は急に新聞社をたずねる気もちになり訪問用紙に名前を書いて三階の応接室へ通されるとまもなく学芸部員の後藤が何時ものような落ちついた顔をしてはいってきた。彼は咳きこんだ態度で軍隊の動静をたずねる伍一の顔につめたい微笑をなげながら無感動な調子で殺された大官の名前をあげてから、「此処へも特務曹長の肩章をつけた男が五、六人の兵士をつれてやってきたそうですがね、工場へ入って活字のケースをひっくりかえしていったくらいで、――」