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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
と言いながら急に言葉を外らすのであった。何れにしても若い将校たちの蹶起が民衆の感情と何処か微妙なところで喰いちがっていることを伍一は昂奮に声を顫わせてまくしたてたが、しかし、相手が一向乗って来そうにもないので拍子ぬけのしたかたちで、「じゃあ」といって立ちあがった。その足ですぐちかくにある「日本新聞聯盟」を訪ねると顔見知りの社員が四、五人ストーブをかこんで何かしきりに話しこんでいた。何処にもまだ正確な情報は入っていないらしく、陸軍大臣が射殺されたというような情報が入ってきたと思うとすぐそのあとから流言だということがたしかめられるというような程度で、次から次へと伝えられる噂を耳にしているうちに、不穏な空気の中で少しずつ民衆の感情からはなれてゆく将校たちの存在が、伍一の頭の中で次第に悲劇的な色彩をふかめて描きだされてくるのである。雪の夜に死を決して立った若い将校たちの顔が、殺された大官よりも一層悲劇的な印象を彼の心によび起すのも不思議であったが、しかし結局残るものは正義が何処にあるかということではなくてチラチラとひらめくようにとおりすぎる劇的な場面への追想だけであった。