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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

それを廊下や隣室から気附かれたら、もうおしまいなのです。

さて、ある夜更けのことでした。三郎は、一巡「散歩」を済ませて、自分の部屋へ帰る為に、梁から梁を伝っていましたが、彼の部屋とは、庭を隔てて、丁度向い側になっている棟の、一方の隅の天井に、ふと、これまで気のつかなかった、幽かな隙間を発見しました。径二寸ばかりの雲形をして、糸よりも細い光線が洩れているのです。なんだろうと思って、彼はソッと懐中電燈を点して、検べて見ますと、それは可也大きな木の節で、半分以上まわりの板から離れているのですが、あとの半分で、やっとつながり、危く節穴になるのを免れたものでした。一寸爪の先でこじさえすれば、何なく離れて了い相なのです。そこで、三郎は外の隙間から下を見て、部屋の主が已に寝ていることを確めた上、音のしない様に注意しながら、長い間かかって、とうとうそれをはがして了いました。都合のいいことには、はがした後の節穴が、杯形に下側が狭くなっていますので、その木の節を元々通りつめてさえ置けば、下へ落ちる様なことはなく、そこにこんな大きな覗き穴があるのを、誰にも気附かれずに済むのです。