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やねうらのさんぽしゃ
屋根裏の散歩者
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页
五
これが、三郎の屋根裏で、又部屋へ帰ってから、考え出した虫のいい理窟でした。読者は已に、仮令以上の諸点がうまく行くとしても、その外に、一つの重大な錯誤のあることに気附かれたことと思います。が、彼は愈々実行に着手するまで、不思議にも、少しもそこへ気が附かないのでした。
五
三郎が、都合のよい折を見計らって、遠藤の部屋を訪問したのは、それから四五日たった時分でした。無論その間には、彼はこの計画について、繰返し繰返し考えた上、大丈夫危険がないと見極めをつけることが出来たのです。のみならず、色々と新しい工風を附加えもしました。例えば、毒薬の瓶の始末についての考案もそれです。
若しうまく遠藤を殺害することが出来たならば、彼はその瓶を、節穴から下へ落して置くことに決めました。そうすることによって、彼は二重の利益が得られます。一方では、若し発見されれば、重大な手掛りになる所のその瓶を、隠匿する世話がなくなること、他方では、死人の側に毒物の容器が落ちていれば、誰しも遠藤が自殺したのだと考えるに相違ないこと、そして、その瓶が遠藤自身の品であるということは、いつか三郎と一緒に彼に惚気話を聞かされた男が、うまく証明して呉れるに違いないのです。