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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

六

それは実に滑稽極る錯誤でした。彼のこの計画は、已にその出発点に於て、一大迷妄に陥っていたのです。併し、それにしても、彼はどうしてこんな分り切ったことを今迄気附かずにいたのでしょう。実に不思議と云わねばなりません。恐らくこれは、さも利口ぶっている彼の頭脳に、非常な欠陥があった証拠ではありますまいか。それは兎も角、彼はこの発見によって、一方では甚しく失望しましたけれど、同時に他の一方では、不思議な気安さを感じるのでした。

「お蔭で俺はもう、恐しい殺人罪を犯さなくても済むのだ。ヤレヤレ助かった」

そうはいうものの、その翌日からも、「屋根裏の散歩」をするたびに、彼は未練らしく例の節穴を開けて、遠藤の動静を探ることを怠りませんでした。それは一つは、毒薬を盗み出したことを遠藤が勘づきはしないかという心配からでもありましたけれど、併し又、どうかして此間の様に、彼の口が節穴の真下へ来ないかと、その偶然を待ちこがれていなかったとは云えません。現に彼は、いつの「散歩」の場合にも、シャツのポケットから彼の毒薬を離したことはないのでした。

六

ある夜のこと――それは三郎が「屋根裏の散歩」