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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页

青空文庫

一月か半月もいると、すぐに次の別の下宿屋へと住みかえるのです。無論その間には、放浪者の様に旅をして歩いたこともあります。或は又、仙人の様に山奥へ引込んで見たこともあります。でも、都会にすみなれた彼には、迚も淋しい田舎に長くいることは出来ません。一寸旅に出たかと思うと、いつのまにか、都会の燈火に、雑沓に、引寄せられる様に、彼は東京へ帰ってくるのでした。そして、その度毎に下宿を換えたことは云うまでもありません。

さて、彼が今度移ったうちは、東栄館という、新築したばかりの、まだ壁に湿り気のある様な、まっさらの下宿屋でしたが、ここで、彼は一つのすばらしい楽みを発見しました。そして、この一篇の物語は、その彼の新発見に関聯したある殺人事件を主題とするのです。が、お話をその方に進める前に、主人公の郷田三郎が、素人探偵の明智小五郎――この名前は多分御承知の事と思います。――と知り合いになり、今まで一向気附かないでいた「犯罪」という事柄に、新しい興味を覚える様になったいきさつについて、少しばかりお話して置かねばなりません。

二人が知り合いになったきっかけは、あるカフェで彼等が偶然一緒になり、その時同伴していた三郎の友達が、明智を知っていて紹介したことからでしたが、三郎はその時、明智の聰明らしい容貌や、話しっぷりや、身のこなし