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やねうらのさんぽしゃ
屋根裏の散歩者
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年8月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 页
それとも、気でも狂ったのではありませんか。そこには、押入れの中には、あの死んだ遠藤の首が、頭髪をふり乱して、薄暗い天井から、さかさまに、ぶら下っていたのです。
三郎は、一たんは逃げ出そうとして、入口の所まで行きましたが、何か外のものを、見違えたのではないかという様な気もするものですから、恐る恐る、引返して、もう一度、ソッと押入れの中を覗いてみますと、どうして、見違いでなかったばかりか、今度はその首は、いきなりニッコリと笑ったではありませんか。
三郎は、再びアッと叫んで、一飛びに入口の所まで行って障子を開けると、矢庭に外へ逃げ出そうとしました。
「郷田君。郷田君」
それを見ると、押入れの中では頻りに三郎の名前を呼び始めるのです。
「僕だよ。僕だよ。逃げなくってもいいよ」
それは、遠藤の声ではなくて、どうやら聞き覚えのある、外の人の声だったものですから、三郎はやっと逃げるのを踏み止まって、恐々ふり返って見ますと、
「失敬失敬」
そう云いながら、以前よく三郎自身がした様に、押入れの天井から降りて来たのは、意外にも、あの明智小五郎でした。
「驚かせて済まなかった」