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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

の句は、唯これ平地より山岳を仰望する時に於てのみ然るものにして、未だ移して以て山上の壮景を説く可からざることを、山は水あるべし、而も遂に雲なかる可からず。

駒ヶ岳の頂上でゆくりなくも素晴らしい雲海と、変幻極りなき其活動とを見て、日の出の礼讃者は多いが雲海の嘆美者がないのに業を煮やして書いたものであった。久保天随君の著わせる明治三十三年発行の『山水美論』を見ると、殆んど同じ事が書いてある。私と同感であったらしい。

かくて広闊なる頂上を徘徊して、自然の大観に俯仰し、天地間の美を極め、清風に嘯きて静に瞑思黙想すれば、宏遠の気象胸中に鬱積して、飄然として身の塵世にあるを忘る、唯神霊の境凡骨久しく駐る可らず、急ぎ路をもとめて宮田に下り、天竜川のほとりより瞻仰として顧れば、宝剣岳の尖頂雲表に出没して、吾を送るものゝ如きを見る。

宝剣岳を下りて伊那の小屋に少憩した後、午後一時に伊那の前岳から烏帽子山に通ずる路を宮田に向って下り始めた。前岳の東の突端に至るまでは、大岩が屹立しているのみでさしたる高低もないが、突端からは急転直下する峻坂で、偃松帯を離れると、また、黒木の大森林である。