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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

其先端は黒部の谷を横切って、時々劒岳の鋭鋒に砥の粉を打ったような霧を浴びせる。五竜岳の崔嵬に続いて鹿島槍ヶ岳の峰頭には、白毛の如き一簇の雲が屯している。祖父岳から岩小屋沢岳、鳴沢岳、赤沢岳にかけて尾根は余程低くなる。針葉闊葉の混淆樹林が黒部の谷底から緑の大波を捲き起して、其低所を目懸けて乗り越そうとするさまだ。蒼黒い偃松の波頭に取り巻かれて、穏かな水溜のような草原が冴えた緑を湛えている所も見える。スバリ岳針木岳が崩岩の頽れをドッと押し出して、この大波を再び黒部の谷へ向けて揺り落している。籠川谷の空には重い積雲の塊が低く垂れて、蓮華岳の巨頭を半ばより截断し、七倉、不動堀沢、舟窪の諸山は、この雲塊の下に黒く沈んで鬱陶しい吐息を洩らしている。藍色をした千切れ雲の影が、不動岳の円頭顱を撫でて、物々しいピラミッド形の南沢岳を横にのろのろ匐って行く、其南の肩のあたりに特異な尖頂を押し立てているのは烏帽子岳であろう。

行手を圧して雄山の絶巓が壊れかかった金字塔のように聳えている。先に下った二人の後を追うて急いだ。磊※たる岩間には高根菫岩爪草などが僅に寸青を点じている外は、植物は至って稀である。