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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)

山の憶い出 上

木暮 理太郎

木暮理太郎『山の憶い出 上』。同一底本的分册已合并为一书。收入:笛吹川の上流(東沢と西沢)、奥秩父の山旅日記、釜沢行、秩父の奥山、利根川水源地の山々、秋の鬼怒沼 、美ヶ原、木曽駒と甲斐駒、黒部川奥の山旅、黒部川を遡る 、針木峠の林道 、春の大方山、三国山と苗場山、八ヶ峰の断裂 。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 页

青空文庫

然るに待てば海路の日和とやら、上越南線が沼田まで開通したことは、三国峠方面へ行く人に取っても、どれ丈便利になったことであろう。上野駅を一番列車で出発すれば、沼田から途中の湯宿まで自動車、それからは歩いても其日の中に三国峠下の法師温泉まで辿り着ける。尤も今では鉄路も水上駅まで延び、清水峠のトンネルも九月から開通することであるし、其上法師温泉迄も自動車が通うようになったということであるから、全く空恐ろしい迄に便利になった。私は幾度この法師温泉に来たことであろう。其頃は五月にならぬと自動車が出ないので、沼田から歩いて湯宿で一泊し、其翌日法師へ着くようにしたこともあった。未だ汽車の通じない頃は、沼田まで高崎から軽便電車に乗ったものであるが、途中よく脱線して其度毎にお客は車から下りて復旧の手伝いをしたりなどした。途中はさして面白いとはいえないが、いつも春か秋の旅であったから、慣れた道でも飽きるという程のこともなかった。

沼田から一里、月夜野橋を渡ると真白に雪を戴いた清水山塊の群峰が利根川の上流に現れて、すっきりした耳二ツの姿が目を喜ばせる。家並の中央を小川が流れて、山間の古駅路の面影を残している月夜野の宿では、五月の五日前後であると節句を祝う古風な幟が七、八十本、其小川の両側に立てられ、手桶やバケツなどに藤の花