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へいまとうぐいす

平馬と鶯

林 不忘

「少年倶楽部」1927(昭和2年)2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,130 字 · 21 页

青空文庫

今までの成績を見ると、三年前までは、ほとんど毎年のように結城の藩が、名誉の勝利を得てきたのだったが、それがどういうものか、下妻藩につづけざまに三年勝ち越されているのである。そこで結城の若侍、腕を扼し、歯を噛んで、今年こそはと意気込んでいる――その仕合も近い。

ところがここに、下妻の藩中に一つの暗い報告が齎された。それは、今年こそは結城の平馬が、いよいよ仕合に出るらしいという一事である。

いったい、毎年試合が近づいて来ると、両方の藩から若侍たちが変装して、各々敵方の藩へ潜り込んで、敵の力量を探索することになっていた。これらの間諜は、あるいは町人に化けて、それとなしに道場の武者窓から試合ぶりを見たり、主だったひとりひとりの太刀筋や、手癖をきわめて、これを逐一自分方へ知らせて、応戦の参考にするのだったが、この二、三年、下妻の間者がいずれも舌を巻き怖気をふるって、引き返して味方へ報告したのが、少年剣客平馬の腕前であった。

あの平馬というやつに出られては、残念ながらこの下妻じゅうに歯のたつ者はあるまい――下妻の若侍一同、みなこう言って、顔を見合わせたものだが、幸いにして今まではいくら強くても平馬は仕合に出られなかったのだ。