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にじ
彩虹
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,898 字 · 28 页
四
んだ、しかし年齢がその時期に来ていることはたしかだ、いつかは、それもそう遠くない将来に、さえが眉をおとし歯を染める時が来る、……そう思うたびに考えたことは、どうか仕合せな結婚であるように、相手にもゆくすえにも恵まれた仕合せな縁組であるようにということだった」
四
伊兵衛の調子が思いがけないほどしみじみとしたものだったので、さえも我知らず眼を伏せ肩をすぼめるようにした。
「その意味から云うと」
と、伊兵衛はしずかに続けた。
「……脇田は才能もぬきんでているし、風格もあのとおりだし、身分も家柄も申分のない男だ、難を云えばあまり条件がさえと違いすぎる点だが、これも脇田が自分で手順をつけるという、彼のことだからこれはもちろん信じてもよいだろう、……おれから云えることはこれだけだが、さえはどう思うかね」
「まるでご自分のことのように熱心に仰しゃいますのね」
さえは顫えるような微笑をうかべながら眼をあげた。
「……他の方でしたら伺うのもいやですけれど、頼三郎さまのお言葉ですから考えてみます」
とつぜん幼な名を呼ばれて、伊兵衛はびっくりしたように振向いた。さえは頬のあたりを上気させ、かつて見たことのない、底に光を湛えたような眼でじっとこちらを見まもっていた。