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かれがころしたか

彼が殺したか

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年1~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 页

青空文庫

「あ、そこにあるか、じゃ、東の単吊じゃないな」

と俺の方を見ながら云った。そして自分も一個の東を手に出して見せた。彼は、東が門風なのだが、捨て場に困っていたわけなのだ。すると、道子も危険を感じなかったと見え、「見えたからすてるわ」と意味の無い打方のようであるが、その二枚の東を一個捨てて来た。つづいて俺の自摸。ところがどうだろう。此の時自摸したのが最後の一個の東であった。俺はすばやく東の単吊に聴牌をかえて七万を打った。清三は手が変ったのに気がつかなかったか、又は気がついてもまさか最後の東を掴んだとは思わなかったと見え、絶対安全と信じてもて余していた一個の東を打って来たから、俺は遠慮なく和ってしまった。清三の一人払いである。

ところがこの際、清三は不快のようすをはっきり表わしながら、

「君はなぜ、道子がすてた時和らなかったんだ。道子に一人払いさせないのか」

と云い出した。俺はたった今、東を掴んだばかりだと云う事を主張して、結局清三に一人払いさせたのであったが、此の俺の主張を、清三は全然信じなかったらしい。

「あんな包ははじめてだ」

と吐き出すように云いながら、マージャンを終って了ったのであった。