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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页

青空文庫

「中学文壇」「中学世界」「秀才文壇」と、手をのばし、しまいには「文庫」だの「明星」にまで、詩や歌などを送っていた。だが、めったに掲載された事はない。わけて「万朝報」に週一回発表される短編小説には、熱を上げて何回も出したが、たった一度、選外佳作に入ったにすぎない。それでも秀才文壇、中学世界、ハガキ文学などでは幾回か和歌、新体詩、短文の賞を獲ては、ひとり得意になっていた。――そのうちに、投稿者の住所から同校生や近所にも、投書家仲間がいるのを知り、やがてコンニャク版の廻覧雑誌を作ったり、小費いを出しあって幼稚な謄写版器械を買って、同人雑誌めいたものを刷って撒いたりしていたが、退学以後は、そうした友達とも、別れた儘になってしまった。会は斯文会と名づけ、雑誌は“野ばら”というのだった。仲間に甲賀太郎、今村均、木村某などというのがいた。それにぼくは大町桂月論などというのを書いたことがある。思えばじつに冷や汗ものである。そして誰も彼も雅号というものをもっていた。雅号でないと文学気分がわかないのだ。ぼくは霞峰と名づけていた。投書にも霞峰をつかって、やたらに出しまくったものである。