轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页
オタマ杓子やボウフラと何ら異なることのない自己の起源に対し、その空白を空白のまま無知でいるにも耐えないのであろう。そこで必然に、記憶前の記憶へまでさかのぼって、自己を描こうとすることにもなる。
ヨハネ伝の“始めに言葉あり”も、仏教の“父母未生以前”も、神道や儒教の説明も、みな人間の記憶以前の記憶にその発想を一つにしている。同時にそれが宗教の誕生といってもいいようだ。その前提を意識界に据えた上でなくては愛も罪も説きえないからではあるまいか。とにかく人間は各※(二の字点、1-2-22)、ボウフラではなく、永劫の時と生命のクサリの一つに自分もつながっている一環だということを、しっかり、知りたがっているのである。それを自己確認しないではいられない者なのだ。というよりは生れた意味もこの生命の真を味わうことができない。また不安でならないというのが、人間あらましの本音ではあるまいか。
歴史はそんな本能をもつ前人たちの累積であり、それを継承する歴史家や作家の仕事にもそういう要素はもっている。だから往々、作家の書くものには、前にもいったような、記憶以前の自画像が現われて来たりして、読者をして奇異な感じに面喰らわせるばあいがなくもない。