轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页

青空文庫

どうかすると一日に二件も三件も医務員の白服と担架の列を見る日がある。さすがそんな時だけは、ドック内も一瞬シュンとなって「今日は悪日だぜ、気をつけろ」などと云いあうが、一時間もたつと忘れてしまう。もっとも些かの恐怖でも念頭にあったら、船具部の仕事などは半日もやってはいられない。

そういう地獄の一丁目と普通世間との門を、二十年以上も朝夕のブーを耳にしながら通っていると、森公のような人生観に到達するのは自然かもしれなかった。人は森公を嘲うが、案外、森公の諦観は、ほかの女房子持ちの多くの仲間を憐れと観ていたのかもわからない。

多くの話題は、職場小屋に全員が集まる昼休みの三十分に沸くのだが、ここでも食い物に次ぐのは猥談であった。森公は甘ッたるいおのろけを眼を細くして云うロマンチストに過ぎなかったが、ほかの連中の猥談というのは、そんな程度のものではなかった。ぼくは幸か不幸か年少から書物を通じて大人たちの秘戯の世界をもう想像の上では充分知悉していたつもりであったが、この人達の猥談に依ってさらに啓蒙を深められたことだった。彼らのする猥談は、小咄的なニュアンスも何の洗練もあるわけではない。