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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

吉川英治『忘れ残りの記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:忘れ残りの記、年譜。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,050 字 · 383 页

青空文庫

じつはお手紙をくれた方には無断なのであるが、さして御迷惑にもなるまいかと思って、文面の一部分をそのまま次に引用さしていただいた。

――(前文略)

文芸春秋の“忘れ残りの記”をおなつかしく拝読いたしました。実は私の母は近藤真琴の次女でございまして、たまたま貴方様の記を読み聞かせましたところ、貴方様の御母堂とは従姉妹同士のよしで、貴方様がその従姉妹の御子息にあたるのかと云ってまことに驚いておりました。

近藤の家でもみな故人となって、孫達は大勢いますが、昔の事など知っているのは母一人になりました。母は数え年八十になりますが、今のうちおたずね下されば聞きとって何なりとお知らせいたします。

念のため、私の母と御母堂との関係やら近藤家のことを略記いたしますと、次のようになります。

近藤真琴の妻真樹(前名幸子)が御母堂の母上の御姉妹です。佐倉藩の吉益という家から出ております。(中略)――貴方様の御母堂は、私の母が芝新銭座の近藤塾(攻玉舎)の娘でいた少女の頃、よく存じあげており、仲よく遊んだものだと申しております。その頃、御母堂には斎藤恒太郎氏(攻玉舎の英語教官)のお宅に姉上と御一しょに居られました。