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せいにかんするアイヌのしゅうぞく

性に関するアイヌの習俗

河野 広道

「北方研究 第一輯」1952(昭和27)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,926 字 · 12 页

青空文庫

この掟はきわめて厳重に守られたのであって、男子の褌と女子のモウルは、魚をとりに河や海に入るときでも、また、温泉に入浴するときでさえも、必ず着用すべきものとされていたのである。

次のようなおばけ話が語られるのも、やはりそのようなモチーフからである。

俺は押しも押されもせね立派な酋長で、立派な女を妻にもち、たのしく暮らしていた。或朝まだ暗い内に浜へ出て、波打際を歩いて行くと、海中からじいっと俺の方を窺っている者がある。何者だろうと思ってよく見ると、編みかけのこだし(樹皮製の手さげ袋)をかぶったような顔の真中からおやゆびを立てたように鼻がにょきっと突き出ていて、しかもその先端にポツンと鼻の孔が一つしかない怪物が、伸びあがり伸びあがり俺をにらんでいて、俺が歩けば歩き、俺が立ちどまれば止まる。走れば彼もいっしょに走るのだ。てっきりおばけ、と思ったので、持っていた棍棒をとり直していきなりガンと喰らわすと、その刹那どうしたことか、俺の股間がしびれる様に痛んだ。思わずしらず尻餅をついて、つらつら思んみるに、今朝はあわてていたので褌もしめずに出て来た。そのため股間の一物が波に影を落していたのだが、それをおばけと見あやまって、とんでもない憂目を見たのだった。