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じょうき

情鬼

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,393 字 · 35 页

青空文庫

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S夫人と私は早速墓地管理事務所を訪ねた。事務所では夫婦者が暴風雨の日に参詣はしたが、預ってある遺骨には断じて異状はないと頑張って、しまいにはこちらの問にも答えず、てんで相手にもなってくれなかった。

秘密に取り扱ってもらいたい、世間に知れるのが嫌だという久子さんの依頼もあるので、この上押しきって調べるわけにもいかなかった。

「遺骨をすりかえるなんて常識じゃ考えられませんわ。誰かの悪戯じゃございますまいか?」

「悪戯としたらちょっとうまい思いつきよ、どうも女の考えらしい。盗んだと云えば第一遺骨が紛失するので、直ぐ知れてしまうんだけど、すりかえたと云うんだと内容だけが変ってる事になるから、お骨には何の証拠もないし小田切さんの妹さんだって迷うわね」

「管理人に突撥ねられたから云うわけじゃございませんが、すりかえるなんてそんなこと、なかなか出来やしませんわ」

納骨堂の扉を開けてもらうのさえ随分面倒だったあの日の事を思い出して、私は云ったのだった。

それなり二人は無言のまま歩きつづけていたが、暫時すると、夫人は突然こんなことを訊いた。

「あなたの知ってらっしゃる宮本夫人というのはどういう人で、今はどうしていられるの?」