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おしみなくあいはうばう
惜みなく愛は奪う
有島 武郎
「有島武郎著作集 第一輯」叢文閣、1920(大正9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,397 字 · 159 页
未来にいかなるよいものが隠されてあろうとも、それは今私達の手の中にはない。現在には過去に在るような美しいものはないかも知れない。又未来に夢見られるような輝かしいものはないかも知れない。然しここには具体的に把持さるべき私達自身の生活がある。全力を尽してそれを活きよう。そういう見方によって生きる人はリアリストだ。
第一の人は伝説に、第二の人は理想に、第三の人は人間に。
この私の三つのイズムに対する見方は誤っていないだろうか。若し誤っていないなら、私はリアリストの群れに属する者だといわなければならぬ。何故といえば、私は今私自身の外に依頼すべき何者をも持たないから。そしてこの私なるものは現在にその存在を持っているのだから。
私にも私の過去と未来とはある。然し私が一番頼らねばならぬ私は、過去と未来とに挾まれたこの私だ。現在のこの瞬間の私だ。私は私の過去や未来を蔑ろにするものではない。縦令蔑ろにしたところが、実際に於て過去は私の中に滲み透り、未来は私の現在を未知の世界に導いて行く。それをどうすることも出来ない。唯私は、過去未来によって私の現在を見ようとはせずに、現在の私の中に過去と未来とを摂取しようとするものだ。