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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
アメリカン・タイプのケチンは、よく出来ているが、食べるものは、切りつめるにいいだけ切りつめ、吝嗇とすれすれのところまでやる、わが石田家の家風では、贅沢な機械どもを、満足させるところまで使いこなせるかどうか、疑問だった。
邸や家具調度だけが荘重で、食事が質素なのは、王朝以来、公卿華族の生活の伝統だが、おちぶれ華族の出である賢夫人の実家でも、食事は、夕食なしの朝昼二食……それも、朝は奈良茶粥に胡麻塩、昼は一汁一菜に麦飯という、切りつめた食例のなかで育ったので、いまもって、その癖がぬけず、朝夕、二度の食事は、おおむね、味噌汁と干物ぐらいでかんたんにすましてしまう。コロッケ屋からコロッケを買うときは、わが家では一流の夕食だが、それも、食卓に家族の顔がそろったところで、寸前に、千々子さまなり百々子なりが、大急ぎで駆けだして買ってきて、経木のまま、ドサリと食卓のうえに投げだすのがきまりだから、わが家のコロッケは、電気レンジはおろか、電気冷蔵庫におさまる暇さえない。
わが石田家が、将来、なにかのぐあいで、ゆたかな家計を保てる都合に成上り、標準週給の七十ドルぐらいはもらい、毎日、夕食にビールを飲んで、ロースト・チキンかビフステックを食べられるような身分になったら、こういうものも面白いだろうが、目刺しと煮豆の境界では、