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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

畳敷きだったところは組木の床になり、ラックを塗って、舞踏場の踊場のようにつるつるにしてある。つい最近、ここでダンス・パァテーがあったのらしく、滑粉を撒いたあとが白く残っていた。

ラック塗りの広廊を見ると、千々子さまは、また昂奮状態になって、

「まあ、すてき」

と憑かれたようにつぶやき、頬を上気させながら、さりげないようすでステップを踏みだした。

「今日は、ご気分がいいようですね……天気のせいかな」

千々子さまは、うしろにいる石田氏に聞えないように顔を伏せながら、

「天気がどうしたって? ……プールがあって、テニス・コートがあって、ダンシングがあって……これで、自動車があったら、申しぶんないわ」

と百々子にささやくと、賢夫人の腰を突ついて、二人で奥のケチンを見に行った。

広廊の東のならびは、いかめしい上段ノ間と、大小二つの書院がつづきになっていたが、ここにも徹底的な改変があった。

入り側にむいた吉野障子は、磨硝子とニッケルを組み合わせた、モダーン・タイプの硝子扉になり、なにやらの工匠が彫った有名な欄間と、銀の引手のついた花鳥の絵襖が取り払われ、襖のあったところにテックスの間仕切りができ、ぞっとするような富士山の油絵がかかっていた。