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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
上段ノ間と二つの書院は、テックスの壁で仕切られて、三つの独立した部屋に成り上り、おのおのの部屋には、ベッドと電気冷蔵庫がついて、独身者アパートのような趣きになっているのである。
暗ぼったい違棚のあったあたりに、ニス塗の扉が見える。なんだと思って開けてみたら、違棚のほうは衣裳戸棚に、下地窓のついた三方壁の古式の袋床は、天井まで白いタイルを張りつめたトイレ兼用のシャワーになっていた。
書院のトイレは、ありふれた水洗便所の形式だが、上段ノ間のほうのは、見たことのないような奇妙な仕掛けになっている。腰掛け式の白い瀬戸の便器のまんなかに、十二糎ぐらいのニッケルの管がおっ立っているだけのものだが、便器のそばのペダルを踏むと、管の先から、噴水のように、シュッと水がふきだす。
賢夫人と千々子さまは台所を見に行き、石田氏は不機嫌な顔でソファに掛けている。退屈になったので、百々子がペダルを踏んで水を出して遊んでいると、石田氏は顔を顰め、にがい調子で叱りつけた。
「それはビデェだ。馬鹿な真似は、いい加減にしてよせ」
「ビデェって、なに? これはなにをするものなの?」
石田氏は横をむいて煙草を喫っていたが、