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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
堀の小説にはそのフンイキが出ていて、若い女の人が好んで彼を愛読しているのも、そのためである。いまだに彼の住んだ追分の家を尋ねて来て、草のうえに坐って見たり、家のまわりで何か見ようとして廻って歩いたり、また、ふいに玄関に訪ねて来る何々という博士も居れば、団体の群から四、五人飛び出してくる人もいた。どの人も死んだ堀のいた処が見たいのだ、ただ想像しただけでは何も捉まえられないからである。
私はたえ子夫人に、入口の道路がかなり手広だから、彼処に若い楓の並木を作って、すずしいかげが夏は斑に道ばたにうつるようにして見なさい、ベンチも一つ置いて腰かけて憩むようにするといいね、そこで旅行者は何でも好きなように連れと話をしてもいいんだから、来年の夏にはそうしなさい、此処は追分の公園みたいなところだからというと、たえ子はおじさんに指図をしていただけるなら、楓の並木を作ってみるわ、と、彼女もその気になって言った。
軽井沢の夏の私の家に来て、これから堀さんの家を見たいという客があると、私はその客を追分の町にあんないして行ったが、そのたびに景色を褒め、埃立った田舎の町まで客は褒め、あんない役の私は一夏に二度は訪ねてみるようになっていた。