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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页
絹子さんは半ば独り言をいひながら、しばらく立つたまま考へてゐた。※(終わり二重山括弧、1-1-53)
※(始め二重山括弧、1-1-52)「ああ、かうしませう」突然、快活に云つて押入をあけて、大きな風呂敷を出して来た。「どうするのですか」「すみません、それぢや電灯を一寸引張つて下さらない」私は電灯をどうやら、敷居の所まで引張つてきた。絹子さんは「有難う」と云つて、その風呂敷を電灯の背後からかぶせた。私の部屋の方には、明りがさつとながれたが、今度は奥の間が暗くなつた。「それでは、貴女の方が暗くなるでせう」私が訊ねると、「あたくしはいいのよ、すぐ寝つかれますわ」――※(終わり二重山括弧、1-1-53)
この後半には寝つかれない晩の詳細の事が描かれているが、彼が小説に心を向けるための、充分なこまかい見通しと、見逃さない呼吸づかいがこの「碓氷越え」にあった。抄出の文章にもその用意がある。頭がよくて聡明で、そのくせ外部からは快活な一青年としか見えなかったところも、好ましい人がらを持っていた。誰にも好かれ、悪感を持たれないのは性来の快活な性分に基づいているらしい。