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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

食えないものにぶら下がっていることの莫迦加減を、藤村は何よりも先きに見すえていた。それと同時に詩の柔らかみが二十歳頃に限られたもので、それを幾ら手強く引きつづけても柔らかい蔓が中途で切断されていることも、藤村はとうに見抜いていたのだ。

作家生活というものの最も賢明なことがらは、書くことよりも、つねにそれを断り続けることである。断らない作家には、あの男なら書くだろうという冷情苛酷な判断の下に、その仕事があつまる。どうせ間に合わせの碌な物しか書いてない奴は、書けない上に書き続けるから頭はバラバラになり、作品の腰が折れてしまうのだ。断る作家は断ることで慎重がられ用いられるに手厚い、ばかを見るのはいつも断らないでいる奴である。これらの温和しい作家は風船玉のようにひとりで、陋居にへし潰れて行った。藤村は断る側の作家であって、一字といえども卑しくしない人だと、いわれていた。実際のことでは一字といえども、ないがしろにしない作家であった。この作為の態度までが作品の手重さに影響していたが、私はこれをばかばかしく苦がり切って、断る奴を眺めていた。断らなくともよい場合にすら断る奴を、その勇気を私もまなぶべきだと思うことさえあった。