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わがあいするしじんのでんき

我が愛する詩人の伝記

室生 犀星

北原白秋「婦人公論 第四十三巻第一号」1958(昭和33)年1月号<br>高村光太郎「婦人公論 第四十三巻第二号」1958(昭和33)年2月号<br>萩原朔太郎「婦人公論 第四十三巻第三号」1958(昭和33)年3月号<br>釈迢空「婦人公論 第四十三巻第四号」1958(昭和33)年4月号<br>堀辰雄「婦人公論 第四十三巻第七号」1958(昭和33)年7月号<br>立原道造「婦人公論 第四十三巻第八号」1958(昭和33)年8月号<br>津村信夫「婦人公論 第四十三巻第九号」1958(昭和33)年9月号<br>山村暮鳥「婦人公論 第四十三巻第十一号」1958(昭和33)年10月号<br>百田宗治「婦人公論 第四十三巻第十二号」1958(昭和33)年11月号<br>千家元麿「婦人公論 第四十三巻第十三号」1958(昭和33)年12月号<br>島崎藤村「婦人公論 第四十三巻第六号」1958(昭和33)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,728 字 · 231 页

青空文庫

死歿十何年か前、軽井沢の私の家に、二人で牡蠣を貰ったからといい、牡蠣を籠に入れ、竹竿の真中にそれをぶら下げて、よいしょ、よいしょとかついで搬んで来たことがあった。私に牡蠣をくれる事よりも二人でかついで来たことが面白かったらしく思えた。藤井の頬ははずんで女にも見られるこちこちが、そのこちこちのゆえに歯がゆげな爽快があった。

またの別の日、迢空の使で藤井は私の東京の家に、その著書を度たび、とどけてくれたことがあったが、その折は先生とは言わずに、折口があがるはずですがといい、折口と呼びすてであった。

またのある日、京浜電車の中で迢空と会ったが、やはり藤井の白い顔がそばに連れ立っていて、それは此方へと何かの包みを藤井が迢空の手から、持ちかえていた。

また別の日にはすぐ折口があとから来ますからといい、藤井は私の家の庭にある縁台に腰を下ろして待っていた。手を膝の上に置いて庭に眼をやる藤井は、二重瞼が大きく開けていて大きな娘さんのように見えた。

昭和十六年十二月、迢空は藤井が入隊するので、第九師団のある金沢まで送って行った。七聯隊は兼六公園とならんでいて、兵隊は石川門から入隊していたが、身動きも出来ない入隊者と見送人の間を、このただならぬ愛弟子と先生が人にもまれながら戦雲此処にも漂うかと思える、混乱の中をじりじりと