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あるおんな
或る女
有島 武郎
1(前編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,981 字 · 295 页
何の希望! 葉子は木村の事については、木村のいわゆる神様以上に木村の未来を知りぬいているのだ。木村の希望というのはやがて失望にそうして絶望に終わるだけのものだ。何の信仰! 何の希望! 木村は葉子が据えた道を――行きどまりの袋小路を――天使の昇り降りする雲の梯のように思っている。あゝ何の信仰!
葉子はふと同じ目を自分に向けて見た。木村を勝手気ままにこづき回す威力を備えた自分はまただれに何者に勝手にされるのだろう。どこかで大きな手が情けもなく容赦もなく冷然と自分の運命をあやつっている。木村の希望がはかなく断ち切れる前、自分の希望がいち早く断たれてしまわないとどうして保障する事ができよう。木村は善人だ。自分は悪人だ。葉子はいつのまにか純な感情に捕えられていた。
「木村さん。あなたはきっと、しまいにはきっと祝福をお受けになります……どんな事があっても失望なさっちゃいやですよ。あなたのような善い方が不幸にばかりおあいになるわけがありませんわ。……わたしは生まれるときから呪われた女なんですもの。神、ほんとうは神様を信ずるより……信ずるより憎むほうが似合っているんです……ま、聞いて……でも、わたし卑怯はいやだから信じます……神様はわたしみたいなものをどうなさるか、しっかり目を明いて最後まで見ています」