轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あるおんな

或る女

有島 武郎

1(前編)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,981 字 · 295 页

青空文庫

といっているうちにだれにともなくくやしさが胸いっぱいにこみ上げて来るのだった。

「あなたはそんな信仰はないとおっしゃるでしょうけれども……でもわたしにはこれが信仰です。立派な信仰ですもの」

といってきっぱり思いきったように、火のように熱く目にたまったままで流れずにいる涙を、ハンケチでぎゅっと押しぬぐいながら、黯然と頭をたれた木村に、

「もうやめましょうこんなお話。こんな事をいってると、いえばいうほど先が暗くなるばかりです。ほんとに思いきって不仕合わせな人はこんな事をつべこべと口になんぞ出しはしませんわ。ね、いや、あなたは自分のほうからめいってしまって、わたしのいった事ぐらいでなんですねえ、男のくせに」

木村は返事もせずにまっさおになってうつむいていた。

そこに「御免なさい」というかと思うと、いきなり戸をあけてはいって来たものがあった。木村も葉子も不意を打たれて気先をくじかれながら、見ると、いつぞや錨綱で足をけがした時、葉子の世話になった老水夫だった。彼はとうとう跛脚になっていた。そして水夫のような仕事にはとても役に立たないから、幸いオークランドに小農地を持ってとにかく暮らしを立てている甥を尋ねて厄介になる事になったので、礼かたがた暇乞いに来たというのだった。