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あるむらのいつつのはなし

或る部落の五つの話

佐左木 俊郎

「文学時代」1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,917 字 · 12 页

青空文庫

竹駒様の祟りだ! 部落中にそんな噂が起こった。

三 不思議な繁昌

部落から六七町ほどの丘の中腹に竹駒稲荷の祠があった。秋は黄褐色、冬は灰鼠の色に、春先は暗紫色になり、そして春の終わりから夏の終わりまでは一色の緑を刷く雑木林の丘だった。雑木林のその単調な色彩に模様づけている若い杉杜の中に、その白木の祠は見え隠れていた。祠の背後には三本の榎と二本の鼠梨の大木が若い杉杜の中に伐り残されていた。前には榊や椿や山黄楊などが植えられてあった。鳥より他には声を立てるもののないような、その寂寥とした森の中から、祠は一目に農耕の部落を俯瞰していた。

祠守りは田舎医者の細君だった。

最初、夫の病中に彼女は夢を見たのだった。――丘の雑木林の中に一本の大きな椿があり、その下に泉がある。その椿を神体として三週間の礼拝を続け、泉の水を飲んで病夫に呑ませるなら、夫の病気は忽ちに癒るであろう。――という竹駒稲荷大明神の夢枕なのだった。彼女はその夢枕の言葉に従った。不思議に夫の病気は、一枚一枚病皮を剥ぎ取るかのように癒って行った。彼女は早速、その場所に、その椿を親柱として白木のささやかな祠を結んだのだった。