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あるむらのいつつのはなし
或る部落の五つの話
佐左木 俊郎
「文学時代」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,917 字 · 12 页
同時に彼女はその奇蹟を部落中に流布した。彼女は人間の願いを竹駒稲荷大明神に伝え、大明神の言葉を人間に受け次いでやると言うのだった。
祠は急に賑い出した。或る農婦の、一昼夜も断続していた胃痙攣が、その御供物の一つの菓子でぴったりと止んだからだった。そして森の中には白い二本の大旗が立った。礼拝の人々は絶えないほどになって行った。緑の林の中に、赤、白、青、黄、紫の五色の旗が翻り、祠の屋根に黄金色の擬宝珠が夕陽をうけて光り出した。そして賽銭が祠守りの生活を十分に保証し、山林や田畑を寄進する地主さえあった。
部落に移り住んで開業して以来、極めて流行らなかった湯沢医者は、最も科学的な自分の職業を捨てて、最も非科学的な女房の職業の下に寄食することになったのだった。彼は彼女と一緒に、昔の湯沢医院を捨てて祠の前に移り住んで行った。そして彼は、その豪壮な新邸宅ですることもなく手持ち無沙汰に暮らしていた。
竹駒稲荷大明神の祠は益々賑って行った。あの猟犬ジョンが死んで以来、一入部落の人気を煽った。そして不思議に、彼等は礼拝と賽銭とによってその病気から解放されるのだった。