轻松读懂日语经典作品
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おうぎの
扇野
山本 周五郎
「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,727 字 · 67 页
「ばかなはなしだ、小娘かなんぞじゃあるまいし」栄三郎は顔をそむけながら云った、「そんなことをしていると旦那をしくじるじゃないか」
「旦那ですって、――つうちゃんにですか」
おさとが訝しそうな声をだしたので、冗談のつもりで云った栄三郎のほうが不審になった。
「そうさ」と彼はおさとを見た、「旦那がいるし子供もあるんだろう」
「まあいやだ」おさとは声をあげた、「つうちゃんは先生にまでそんなことを云ったんですか、まあ呆れた」
「そうじゃなかったのか」
「そうじゃありませんとも」とおさとは怒ったような調子になった、「世話をしようとか落籍せようっていうお客さまが多くて、あんまりうるさいからそういうことにしてあるんです、旦那どころですか、あの人はまだ男の肌も知ってはいないんですよ」
栄三郎は頭の中で火花が散ったように思った。ぱっと明るく火花が散り、(その閃光で)それまで見えなかったものが、まざまざと見えたように感じられた。
「しかし、――」と彼は口ごもった、「あれはもう二十五か六になるんだろう」
「だから旦那があるといってもとおるんじゃありませんか、それに、そんなことは年とは関係がないし、つうちゃんのことならおかみさんもあたしもよく知っていますわ、――来て下さるんでしょう」