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とびら

扉

小川 未明

「早稲田文學」1910(明治43)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,143 字 · 17 页

青空文庫

Bは、こうやっている間にかけられるのでないかと思ってわざとKの顔を見ずに下を向いていた。

「話したよ。」と、Kは冷やかに、薄気味悪く笑った。

「何だと言いましたか。」

「お前に分りそうなものだ。心に思っている秘密はみんな言ってしまった。」

と、Kは冷笑った。

「他の秘密を聞くという法があるか?」と、Bは覚えず真紅になった。

「だが、君は僕にかかることを許してくれたのでないか。」

「かかることは許しても、秘密を聞けとは言わなかった。」とBが怒った。

痩せた、背の高いKは窪んだ眼を輝かしてハハハハハと、冷やかに笑った。

「かかってしまってからは私のものだ。私の自由になってしまう。」

「もう僕は貴君の自由にならない。」と、Bは毅然としていった。

「駄目です。」とKは両手をズボンの隠しに入れて少し背を伸ばした。

「なにが駄目なことがあるものか、もう僕は君の自由にならぬ。」

「いや、君にはもはや僕に対して反抗力が失せている筈だ。僕を非常に怖しいものと思っている。僕を偉い人と思って、僕の奴隷となっている。」

「なに?」……

「君は僕の勝手になるのです。一生君は僕の自由にならなければならぬ。