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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

そしてそれを言うのはお絹だった。弟は妻のために、お絹姉さんを、少し文句の多すぎる小姑だと思っていた。

しかし、お絹は、ここでもあまりおひろと気の合った方ではなかった。おひろには森さんがあった。次ぎのお京には、青物問屋の旦那があった。

「けれども、たまに行けばお互いに懐かしいが、大阪の家だって、長くいればおもしろい日ばかりは続かないだろう」

「だから私も自分の小遣ぐらいもってゆかなければ。子供を連れだしたって、いちいち嫁さんから小遣もらうのは厭やし、お寺詣りするにしても、あまりけちけちした真似をしたくないと思うから」

「月々大阪からいくらか仕送ってもらって、こっちで暮らすわけにゆかない。商売するにしても、何か堅気なものでなくちゃ。お絹ちゃんなんかには、こんな商売はとてもだめだ」

「けど女のする商売といえば、ほかに何にもないでしょう」

「さあね」

お絹はやがて、風呂の火を見に立っていった。

風呂はめったに立たなかった。綺麗好きなお絹は人にお湯を汚されるのをひどく嫌った。その上心臓が弱いので、水を汲みこむのが大仕事であった。その日は、辰之助が昨夜水を汲みこんでいってくれた。