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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

「おい、己ののも一遍調べてみておいておくれ」道太はからかうように言った。

「かしこまりました」おひろは答えた。

「いくらあるもんですか」お絹は言ったが、「お料理の方は辰之助さんがお持ちやそうですし、花代といったところで、たんともないさかえ」

「そうはゆかない。勘定は勘定だ。だいぶ長くなったから、もうそろそろ御輿をあげるとしよう」

「お仕事はもうおしまいですか。何だかちょこちょことやって、もうそれでいいの」

「まあね」

「まだ何か食べたいものはないんですか」

「もう食べあきた。どこへ行っても同じものばかりで。女を買おうと思えば、少しいいのは皆んな封鎖だろう」

「そういったような工合だけれど、この節はあながちそうとも限らんのや」

電話が二度も演舞場からかかってきて、何やらの踊りの鼓を受け持つことになっている歌子の来ようが遅いので、一度は後と廻しにしたけれど、早く来てくれないと困るというのであった。

「今使いを出しましたから、帰ってくるとすぐ上げます。お気の毒ですね」お絹は答えていた。

抱えといっても歌子は丸抱えではなかった。二三日またぐれだして、保険会社の男とかと、始終どこかへ入り浸っていた。