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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

お絹はぶつぶつ言っていた。

「この家は、これでいったいなり立ってゆくのかね」道太はおせっかいに訊いた。

「さあどうやら、見こみないでしょう。私厭だと言ったんだけれど、皆なしてやらすようにしたんです」おひろはお絹に当てつけるように言うのであった。

お絹は黙っていた。

おひろは細君を亡くした森宗匠のところへ、納まりたい腹でいたが、宗匠も来るたんびにおひろを女房扱いにしているのであった。おひろは今でも辰之助の妹婿の山根に心が残っていたけれど、お絹に言わせると、金には切れ放れはよかったし、選びもおもしろい山根ではあったけれど、別れぎわが少し潔くない点があったので、その手前としても、おひろはのめのめ商売なぞしているのは厭だった。お絹はおひろを、宗匠の家へ入れるには、相当条件をつけなくてはならないと考えていたが、それよりもそうなれば、自分独りでこの家を持ち続けてゆくか、解散するか、二つのうち一つを択ばなければならない破滅になっていた。

今朝も珍らしく早く起きたおひろは茶の室でお芳にさんざん不平を訴えていた。よく響くその声が、道太のうとうとしている耳にも聞こえた。