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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
岡本綺堂『文藝別冊[総特集]岡本綺堂』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の怪、お住の霊、河童小僧、明治時代の湯屋、父の怪談、山椒魚、子供役者の死、黄八丈の小袖、勘平の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 页
のであろうか、兎にかく其小僧の尻に金銀の眼が光っていた事は、福島金吾確かに見とどけたと云う事。
因みに記すも古めかしいが、右の溜池界隈には猶一種の怪談があって、これも聊か前の内藤家に関係があるから、併せてここにお噺し申そう、慶応三年の春も暮れて、山王山の桜も散尽くした頃の事で、彼の溜池の畔に夜な夜な怪しい影がボンヤリと現われる。もっとも其頃の溜池は中々広いもので、維新後に埋められて狭くなり、更に埋められて当時の如く町家立ち続く繁華の地となったが、慶応頃の溜池は深く広く、其末のドンドンには前記の如く河童小僧さえ住むと云う位、其の向う岸即ち内藤家の邸の裏手に当って、影とも分かず煙とも分かぬ朦朧たる物が、薄墨の絵の如くに茫として立迷っているのを、通行人が認めて不思議不思議と云い囃す、其の評判を同邸の家中の者が聞伝えて、試みに赤坂の方へ廻って見渡すと、何さま人の噂に違わず、影か幻か朦朧たる物が水の上に立っていて、其の形さながら人の如くであるから、何れも唯だ不思議だ奇怪だと云うのみであったが、念の為に小舟を漕ぎ出して其影の辺に近づいて見ると影は消えて何にもない、扨又旧の岸へ帰って見ると、彼の影は依然として水の上に迷っている、これは恐らく水中に何物か沈んでいる