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いけぶくろのかい

文藝別冊[総特集]岡本綺堂

岡本 綺堂

岡本綺堂『文藝別冊[総特集]岡本綺堂』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の怪、お住の霊、河童小僧、明治時代の湯屋、父の怪談、山椒魚、子供役者の死、黄八丈の小袖、勘平の死。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 页

青空文庫

明治時代の湯屋

明治時代の湯屋について少しく調べたいことがあったので旧い雑記帳を引っくり返したり、旧い記憶を呼び起したりした。その時代の銭湯と今日のいわゆる浴場とは多少の相違があるので、何かの参考までにその一部をここに抄録することにした。勿論、一口に明治といっても、その年代によって又相当の変遷が見出されるのであるが、ここにいう「明治時代」は二十七八年頃から三十七八年、即ち日清戦争の頃から日露戦争の頃に至る十年間ぐらいを中心にして、その前後を語るものと思って貰いたい。

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日清戦争の頃から湯屋を風呂屋という人がだんだんに殖えて来たのを見ても、東京の湯屋の変遷が窺い知られる。もちろん遠い昔には丹前風呂などの名があって、江戸でも風呂屋と呼んでいたらしいが、風呂屋の名はいつか廃れて、わずかに三馬の「浮世風呂」にその名残りを留めているに過ぎず、江戸の人は一般に湯屋とか銭湯と呼び慣わしていた。それが東京に伝わって、東京の人もやはり湯屋とか銭湯とか呼ぶを普通とし、たまに風呂屋などという人があれば、田舎者として笑われたのであるが、この頃は風呂屋という人がなかなか多くなった。