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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
岡本綺堂『文藝別冊[総特集]岡本綺堂』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の怪、お住の霊、河童小僧、明治時代の湯屋、父の怪談、山椒魚、子供役者の死、黄八丈の小袖、勘平の死。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 页
に浴槽を低く作ることが行われ、最初は温泉風呂などと呼んでいた。この流行は先ず下町から始まって山の手に及び、それに連れて無用の柘榴石も自然に取払われた。
湯銭は八厘から一銭、一銭五厘、二銭と、だんだんに騰貴して、日露戦争頃までは二銭五厘に踏み留まっていたが、場末には矢張り二銭というのもあった。ほかに「留め湯」とか「月留め」とかいう制度があって、毎日かならず入浴する人に対しては割引をする。それも最初は一ヶ月前金十銭ぐらいであったが、湯銭騰貴に伴って、二十銭、二十五銭、三十銭となり、湯銭二銭五厘の当時には五十銭となった。又、朝夕二回入浴する人に限って、朝湯は一ヶ月十銭ぐらいに割引するのが普通であったから、職人などは勿論、入浴好きの人々は朝と夕とに二回の入浴をするのが多かった。
朝湯は大抵午前七時頃から開くのであるが、場所によっては午前五時半か六時頃から始めるのもあった。それを待ちかねて、楊枝をくわえながら湯屋の前にたたずみ、格子の明くのを待っている人もある。男湯に比べると女湯は遅く、午前九時か十時でなければ格子を明けなかった。その朝湯を廃止することになったのは大正八年の十月で、燃料騰貴のために朝から湯を焚いては経済が取れないと、浴場組合一同が申合せて朝湯を廃止したのである。